
環境を変えることを選んだ親子
日本とは違う場所で、子どもたちの新しい時間をつくる、小学6年生と小学4年生の男の子、そしてお母さん。
3人でドゥマゲッティでの生活を始めたご家族がいました。
このご家族が海外での生活を考えた背景には、日本での社会生活の大変さがありました。
特に小学4年生のお子さんは、日本でも学校へ行くことができない時期があり、お母さんはとても悩んでいました。
詳しい事情についてはここでは触れません。
ただ、お母さんが、
「日本とは違う環境で、子どもたちに伸び伸びやってほしい」
と考えていたことは、今でも印象に残っています。
最初からドゥマゲッティだったわけではない
海外で暮らすことを考えたとき、フィリピンは比較的予算的にも現実的な選択肢だと調べていたそうです。
最初に検討していたのはセブでした。
実際に、マニラやセブにも行き、それぞれ約1か月ほどホテルに滞在しながら、海外での生活を試していました。
一度日本へ帰国し、また別の場所を見てみる。
そうやって実際に生活しながら、ご家族に合う場所を探していました。
都市ではなく、もう少し落ち着いた場所へ
マニラやセブでの経験を通して、お母さんが感じたことがありました。
それは、都市部ではなく、もう少しゆっくりと暮らせる場所がいいということでした。
また、セブで利用したサポート業者とのやり取りの中で、満足できない経験もあったそうです。
その経験もあり、改めて別の場所を探している中で、ドゥマゲッティの情報を知りました。
治安や環境。
そして、都市部とは違った落ち着いた雰囲気。
そうしたものを考えた結果、
「ここにしてみよう」
と、ドゥマゲッティへ場所を変えることを決めました。
その後、知り合いを通じて私たちDEECを紹介していただきました。
ドゥマゲッティで始まった1年半
ドゥマゲッティでの生活は、約1年半になりました。
私たちは、到着初日の空港のお迎えから関わりました。
まずは学校を見学し、入学までの手続きをサポート。
同時に、家族で暮らすための借家探しもお手伝いしました。
海外で新しい生活を始めるときには、学校だけでなく、住む場所も必要です。
どこに住むのか。
学校へどう通うのか。
実際に生活を始めるまでには、いくつかの準備があります。
そうした部分を一つずつサポートしていきました。
「安心して学校へ行けるように」
小学6年生のお子さんは、こちらでは継続して学校へ通っていました。
一方、小学4年生のお子さんは、日本でも学校へ行くことが難しかったこともあり、こちらでも最初から順調だったわけではありません。
最初は学校へ通っていましたが、2か月ほどすると通えなくなりました。
その間、私たちは学校への送迎も行いました。
少しでも安心して学校へ通えるように、約2か月ほど送迎を続けました。
しかし、その後は学校へ通うことができず、自宅で過ごすようになりました。
二人の子ども、それぞれの変化
このご家族で印象的だったのは、兄弟でも、それぞれ違った姿を見せたことです。
小学6年生のお子さんは、最初はおとなしい印象でした。
あまり積極的に話すタイプではありませんでした。
ところが、ドゥマゲッティで生活していくうちに、少しずつ変わっていきました。
友達もできました。
そして、私に現地のことをいろいろ質問してくるようになりました。
学校のこと。
こちらの生活のこと。
いろいろなことに興味を持って、自分から聞いてくる。
その姿が、とても印象に残っています。
一方、小学4年生のお子さんは、最初からとてもおとなしく、あまり話をしませんでした。
最初の頃は学校へ通っていましたが、その後は自宅で過ごすようになり、私自身もその後あまり会う機会がありませんでした。
同じ環境にいても、子どもによって反応は違います。
環境を変えれば、必ず変わるわけではない
このケースを通して、私自身も改めて感じたことがあります。
環境を変えたからといって、すべての子どもがすぐに変わるわけではありません。
小学6年生のお子さんは、友達ができ、積極的になり、現地のことにも興味を持つようになりました。
一方で、小学4年生のお子さんは、こちらでも学校へ通い続けることはできませんでした。
だからといって、今回の1年半に意味がなかったとは、私は思っていません。
今の時点だけを見れば、分からないこともあります。
子どもが経験したことが、何年後、何十年後にどこかで生きてくることもあるかもしれません。

お母さんが願っていたこと
お母さんが話していた、
「日本と違う環境で、伸び伸びやってほしい」
という言葉を、私は覚えています。
それは、子どもを無理に変えようということではなかったのだと思います。
今いる場所とは違う場所に身を置いてみる。
違う人たちと出会ってみる。
違う生活を経験してみる。
その中で、子ども自身が何かを感じてくれたらいい。
そんな思いだったのではないでしょうか。
1年半という時間が、いつか何かにつながるかもしれない
このご家族は、その後、日本へ帰国されました。
ただ、私は小学6年生のお子さんから聞いた言葉を今でも覚えています。
「中学を卒業したら、ドゥマゲッティの高校に一人で留学したい」
そう話していたのです。
もちろん、将来どうなるかは分かりません。
でも、ドゥマゲッティで過ごした1年半の経験が、その子の中に何かを残したのかもしれない。
私はそう感じています。
環境を変えたからといって、必ず何かが変わるわけではありません。
それでも、今まで知らなかった場所で生活した経験が、将来の選択肢の一つになることはある。
私はそう信じています。
DEECがサポートしたこと
このご家族に対して、DEECではさまざまな場面でサポートをしました。
到着初日の空港お迎え
学校見学
学校への入学手続き
借家探し
生活を始めるまでの現地サポート
小学4年生のお子さんの学校送迎
その他、現地生活に関するサポート
特に、このケースでは、学校へ通うことだけを目的にするのではなく、そのご家族が実際にドゥマゲッティで生活を始めるところから支えることが重要でした。
DEECから
海外へ行けば、子どもが必ず変わる。
私は、そうは思いません。
子どもには、それぞれのペースがあります。
同じ家族の中でも、兄弟で反応が違うこともあります。
今回も、二人の子どもたちは、それぞれまったく違った姿を見せました。
それでも、環境を変えることで、それまでにはなかった経験をすることはできます。
新しい友達ができるかもしれない。
知らないことに興味を持つかもしれない。
自分から「もっと知りたい」と思うかもしれない。
あるいは、すぐには何も変わらないかもしれません。
でも、その経験が将来どこかで、その人の選択肢につながる可能性はあると思います。
今回の1年半が、このご家族の将来に何かしらの選択肢を残してくれていたらいい。
そして、いつかその経験を思い出す日が来てくれたら。
私はそんなことを願っています。
1年半の先に
ドゥマゲッティでの生活を終え、今は日本へ戻ったこのご家族。
それでも、あの1年半が終わったわけではないのかもしれません。
小学6年生だった子が、
「中学を卒業したら、またドゥマゲッティの高校へ来たい」
と言っていたこと。
その言葉を聞いたとき、私は嬉しく思いました。
環境は、人を必ず変えるものではありません。
でも、新しい環境を経験することは、未来の選択肢を増やすきっかけにはなり得る。
それが、このご家族と過ごした1年半から、私が感じたことです。
