海外生活で子どもが「伝わらない」を経験する意味|伝える力はどう育つ?

海外の学校生活で、外国の子どもに身振りを交えながら一生懸命伝えようとする日本の子どもたち。 ドゥマゲッティ留学

「伝わらない」は、海外生活では珍しくない

親子留学をしていると、子どもが「言ったのに伝わらなかった」という場面に出会うことがあります。

たとえば、買い物をするとき。学校で友達に何かを伝えたいとき。遊びに誘いたいとき。困っていることを先生に伝えたいとき。

日本なら、いつもの言葉で話せば伝わることでも、海外ではそうとは限りません。

英語を使う場面であれば、知っている単語が足りないこともあります。発音や言い方がうまく伝わらないこともあります。そもそも、相手がどのように受け取るかが日本とは違う場合もあります。

子どもにとっては、少し戸惑う経験です。

でも、この「伝わらない」という経験は、単純に困った出来事として終わるとは限りません。

伝わらないと、子どもは「どうしたら伝わる?」と考える

一度で伝わらなかったとき、子どもは次の方法を考えることがあります。

もう少しゆっくり話してみる。

知っている別の言葉に言い換えてみる。

指をさして説明してみる。

身振りを使ってみる。

実物を見せてみる。

相手の表情を見ながら、伝わったかどうかを確認してみる。

こうした行動は、単に「英語を覚える」という話とは少し違います。

自分の伝えたいことを相手に届けるために、方法を変えてみる経験です。

文部科学省も、コミュニケーションでは自分の思いや考えを伝えようとすると同時に、相手の思いや考えを理解しようとすることが大切だとしています。

海外生活では、こうした伝え合いを、日常の小さな出来事として経験する機会があります。

「英語が話せない=伝えられない」ではない

ここは、親子留学を考えるときに大切なポイントです。

子どもが英語を十分に話せなくても、伝える方法はあります。

たとえば、欲しいものを指さす。

「This one」と言って商品を示す。

簡単な単語を組み合わせる。

ジェスチャーを使う。

絵を描いて説明する。

相手に「OK?」と確認する。

こうした小さな工夫も、立派なコミュニケーションです。

もちろん、英語を学ぶことは大切です。ただ、ここで見たいのは英語力そのものではありません。

「どうすれば相手に伝わるだろう」と考えて、自分なりに行動することです。

伝わらない経験は、子どもの「伝え方」を広げる

日本にいると、子どもの言いたいことを親が理解して、先に説明してあげることがあります。

「こう言いたいんでしょ?」

「それはこう伝えればいいよ」

「お母さんが言ってあげるよ」

もちろん、必要な場面では親のサポートが大切です。

ただ、毎回大人が代わりに伝えてしまうと、子ども自身が「伝える方法を探す」機会は少なくなります。

海外では、親がすぐに代わりに話さなくても、子ども自身が伝えようとする場面が自然に生まれることがあります。

そこで、少し待ってみる。

子どもがどんな方法を使うのかを見る。

必要なら「どうしたら伝わりそう?」と問いかける。

このくらいの関わりでも、子ども自身が考える余地をつくることができます。

相手の反応を見る力も育っていく

伝える力は、自分が話す力だけではありません。

相手の反応を見ることも含まれます。

話している相手が困った顔をしている。

笑っている。

首をかしげている。

もう一度聞こうとしている。

そうした反応を見ながら、「まだ伝わっていないのかな」と考える。

そして、もう一度違う方法で伝えてみる。

この繰り返しによって、子どもは「自分が言いたいこと」だけではなく、「相手にどう届いたか」にも目を向けるようになります。

これは海外生活だから必ず身につくものではありません。

日本でも、友達との遊びや家族との会話の中で同じような経験はできます。

ただ、言葉や文化が違う環境では、伝え方を工夫する必要がある場面が増えることがあります。

海外の学校で、身振りを交えながら友達に一生懸命伝えようとする子ども。

親がすぐに助けるより、「見守る」ことが役立つ場面

子どもが外国の友達に何かを伝えようとしている。

でも、なかなか伝わらない。

そんなとき、親はつい助けたくなります。

「こう言えばいいよ」と教えたり、代わりに説明したりすることもできます。

ただ、安全に関わることや、子どもが困り切っている場合を除けば、少し待ってみる方法もあります。

子どもが自分で考える時間をつくるためです。

どうしても難しそうなら、親が完全に代わるのではなく、最初の一言だけ助ける方法もあります。

「何を伝えたい?」

「指で教えてみる?」

「もう一回、ゆっくり言ってみようか」

このように、答えを与えるのではなく、伝えるための方法を一緒に探すこともできます。

「伝わらなかった」ことを責めない

子どもがうまく伝えられなかったとき、親が「もっと英語を勉強しないとね」と考えてしまうことがあります。

しかし、伝わらなかった経験そのものを失敗として扱う必要はありません。

大切なのは、その後です。

「どうして伝わらなかったんだろう?」

「次はどうしてみよう?」

と考えられれば、その経験は次の行動につながります。

一回でうまくいかなくても大丈夫。

伝え方を変えてみる。

相手の反応を見る。

もう一度試してみる。

その積み重ねが、子ども自身の伝える力を少しずつ広げていきます。

親子留学で見たいのは「英語が上達したか」だけではない

親子留学では、どうしても「どれくらい英語が話せるようになったか」に目が向きます。

もちろん、それも大切な変化の一つです。

でも、海外で生活している子どもの様子を少し細かく見てみると、別の変化に気づくことがあります。

以前は黙っていたのに、自分から伝えようとするようになった。

言葉だけでなく、ジェスチャーを使うようになった。

相手の表情を見るようになった。

伝わらなかったときに、すぐ諦めず別の方法を試すようになった。

こうした変化は、テストの点数だけでは見えにくいものです。

海外生活の中で生まれる小さな「伝わらない」が、子どもの行動を変えるきっかけになることがあります。

親子留学は「伝えること」を考える経験にもなる

海外で暮らすと、言葉の違いに戸惑うことがあります。

でも、その戸惑いがあるからこそ、「どうすれば伝わるだろう」と考える場面も生まれます。

言葉を覚えるだけではなく、相手を見る。

伝え方を変える。

相手の反応を確かめる。

もう一度試してみる。

そして、ときには「今はうまく伝わらない」と受け止める。

こうした経験を重ねることは、海外生活の中で子どもが得られる一つの学びです。

親にできることは、すべてを代わりに解決することではありません。

子どもが自分で伝えようとしている姿を見守り、必要なときに支えること。

その積み重ねが、「自分なりに伝えてみよう」という気持ちにつながっていくのではないでしょうか。

よくある質問

Q. 英語が苦手な子でも「伝える力」は育ちますか?

はい。英語力とは別に、伝えたいことを身振りや表情、知っている言葉などで工夫して伝える経験があります。大切なのは、完璧な英語を話すことだけではありません。

Q. 子どもが伝えられず困っていたら、親は助けるべきですか?

安全に関わる場合や、子どもが一人では難しい場合は助けて構いません。ただし、すぐに全部を代わりに話すのではなく、「どう伝えてみる?」と一緒に方法を考える関わり方もあります。

Q. 「伝わらない経験」は子どもにとってストレスになりませんか?

戸惑いやストレスになることはあります。だからこそ、無理をさせるのではなく、子どもの年齢や性格に合わせて支えることが大切です。小さな成功や「伝わった」という経験も一緒に積み重ねていきます。

Q. 日本にいても同じ経験はできますか?

できます。友達との遊びや学校生活、家族との会話など、日本でも伝え方を工夫する場面はあります。海外生活は、それを異なる言葉や文化の中で経験する機会の一つと考えるとよいでしょう。

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